医院名 |
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岩本医院 |
院長 |
岩本 康人 |
住所 |
〒306-0515 茨城県坂東市沓掛850 |
診療科目 |
内科・外科・循環器内科・消化器内科・小児科・呼吸内科 |
電話番号 |
0297-44-2033 |
血液が血管の中を通るとき、血管にかかる圧力のことを血圧といいます。
心臓は、ポンプのように毎分60~70回ぐらい、血液を血管へと押し出しています。これが、手首などをさわるとドクンドクンと打っている脈になります。
心臓が収縮して血液を押し出した瞬間は、血管にいちばん強く圧力がかかります。これが収縮期血圧(上の血圧)です。そして、収縮した後に心臓がひろがる(拡張する)ときには、圧力がいちばん低くなります。これが拡張期血圧(下の血圧)です。上の血圧と下の血圧のどちらが高くても、高血圧といいます。
ホースに水を流すとき、水を多くすれば、ホースはぴんと張りつめた状態になります。また、どこかでホースを押えつけて通りにくくすれば、水の量は少なくても、ホースはやはり張りつめた状態になります。これと同じように、血圧も、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)が増えたり、血液を流す血管の通りづらさ(末梢血管の抵抗)が強くなると血管の圧力(血圧)が上昇します。
塩分の多い食事をすると血液の塩分濃度が高くなります。血液の塩分の濃度が上がりすぎないように血管のまわりの細胞から水分が血管に移動します。そうして血管の中の水分が増えて血管の中の圧力が高くなります。血管に内側に強い圧力がかかると血管の内側が傷つき、血管の壁にコレステロールなどの脂肪分が入り込みやすくなります。そうして血管の弾力性が失われたり、血管がせまくなりさらに血圧が上がります。
高血圧とは、安静状態で常に血管に強い圧力がかかりすぎている状態をいいます。高血圧になると血管に常に負担がかかるため、血管の内壁が傷つき、柔軟性がなくなった結果血管(動脈)が硬くなる動脈硬化を起こしやすくなります。その結果、血管の病気(脳卒中、心臓病、腎臓病)になりやすくなります。
高血圧の中でもはっきりした原因のわかるもの(二次性高血圧といいます)もありますが、これは高血圧の方の1割もないと言われています。
高血圧の大部分は原因が特定できないもので本態性高血圧といいます。実際には、長年の食事の内容(塩分のとりすぎ)、肥満、ストレス、不眠、喫煙、遺伝などが様々に組み合わさって高血圧になると考えられています。
*二次性高血圧:血圧を上げるホルモンの過剰、腎臓の病気など
高血圧になったらすぐにわかるといいですが、自覚症状はほとんどといってありません。人によっては、高血圧と診断される直前から肩こりがひどくなったとか、頭痛がするようになったとかいう人がいますが、これも高血圧の特有の症状ではないので、症状だけで高血圧を見つけることはできません。
そのため、定期的に血圧を測っていないと、高血圧を発見することは難しくなります。健康診断を受けていれば早めに発見できます。しかしせっかく健康診断で早めに発見されても、「元気で全く問題がないから」といって放置される方が多くいます。放置すると、徐々に血管がむしばまれ、ひどい動脈硬化になった結果、ある日突然、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などの発作を起こして時に死に至ったり重大な後遺症に悩む事になります。そのため高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれています。
実際に高血圧かどうかの診断は診察室で測定した数値で判断されます。私たちの血圧は、ちょっとしたこと(緊張、からだを動かす、寒さを感じるなど)で上昇します。こうした一時的な血圧上昇は、高血圧とはいいません。また飲酒や入浴直後は血管が拡張し血圧が一時的に下がるため血圧のタイミングとしては不適切です。こうして血圧は常に変動していますので個々の値に一喜一憂することなくおおむね平均どのくらいなのかを把握し医師の判断をあおいでください。
血圧を正確に測るには2~3分間座って安静にした後の血圧を測定する事が必要です。また、外来では緊張で一時的に上昇する方もいますので、ご家庭でも家庭血圧を測って頂き参考にします。
外来では緊張で血圧が上がってしまう方、逆に昼間は血圧が正常なのに、早朝に血圧があがる方など様々です。また月一回の外来での血圧の値よりも普段の血圧がその人本来の血圧です。そのため、普段のご家庭での複数回の血圧測定が大切になります。
①血圧計選び
指先や手首で測るタイプの血圧計より上腕(二の腕)で測るタイプが正確です。電気屋さん、ホームセンターで購入できる大手メーカー(テルモなど)で4000~5000円のもので十分です。
②いつ測るか
朝と夕方一日二回測定するのが理想です。
朝はおきてから1時間以内に排尿して朝食前に測ります。
夕方(夜)は入浴前に測るか入浴して1時間以上おいて測ると良いと思います。
③どのように測るか
腕の上に血圧計を巻きますが、薄手のシャツならその上から測っても結構です。座って腕を机などにのせ、1~3分してから測ります。血圧は一機会2回までそれぞれの値もしくはその平均値を記録します。
血圧が高くなると、血管にいつも圧力がかかるので血管の壁が傷み易くなります。動脈硬化を起こした脳の動脈に高い圧力がかかると脳の血管が 破れて、出血が起こります。これが脳出血です。脳の血管がつまるのが脳梗塞(脳こうそく)です。脳の血管の障害が原因となって脳が正常に働かなくなります。
高血圧によって最もリスクが高くなるのが、脳卒中です。収縮期血圧最高血圧)が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが男性で約20%、女性で約15%高くなります。脳卒中は命が助かっても、運動障害や言語障害が残りやすく、長期のリハビリが必要となることも少なくありません。
心臓は、硬くなった抵抗力の多い血管に血液を押し出さねばならなくなり、心臓にも負担がかかります。心臓が多くのエネルギーを必要とし、疲れやすくなり血圧をおくりだせなくなります(いわゆる心不全)。
心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶのは冠動脈(冠状動脈)と呼ばれる血管です。その血管の内側が狭くなり血液が心臓の筋肉に流れにくくなる狭心症や、動脈硬化を起こした部位がもろく傷ついた場合にそこを修復しようとして血管内にかさぶたのような血栓ができて血管が詰まって心筋が壊死(腐ってくる)を起こすのが心筋梗塞です。
心臓病や脳卒中の陰に隠れて意外に知られていませんが、腎臓も動脈硬化の影響を大きく受ける臓器です。腎臓は、血液の中から不用な老廃物や有害な物を濾過(ろか)して尿にして体外に出すという働きを持っている臓器です。腎臓の本質部分は、毛細血管のかたまりのようになっています。だから、動脈硬化が起こって血液の流れが悪くなると、腎臓の働きはぐんと落ちてしまいます。そうすると、体内に老廃物がたまったり、血液中の塩分(ナトリウム)も尿にうまくだすことができず、さらに血圧が上昇する悪循環を起こしやすくなります。ですから腎臓機能が落ちますと、脳卒中や心筋梗塞になり死亡率も高くなることがわかっています。
高血圧の原因の検索と今ある合併症(動脈硬化、心臓病、腎臓病の有無など)を評価して治療を決めていきます。
① 問診
家族で高血圧の方がいらっしゃるのか、喫煙の有無、食生活、体重・体格指数(BMI)を調べお聞きします。
② 2次性高血圧(血圧を上昇させるホルモン異常、腎機能低下などによる高血圧)の有無の評価
血液と尿検査で血中、尿中のホルモンの検査、腎機能のチェック
① 血管の状態の把握
② 心臓のチェック
③ 腎臓のチェック
血液検査(尿素窒素、クレアチニン)と尿検査(尿蛋白)で腎機能の評価をします。
まず、本当に高血圧なのか血圧を自宅で測ってもらいます(血圧計の貸し出しも行っています。)。血圧手帳をお渡ししご自宅で血圧を記入してきていただきます。ご家庭での血圧と診察室での血圧を測りその血圧の値と今ある合併症(動脈硬化、心臓病、腎臓病の有無など)を評価して治療を決めていきます。
ご自身では、高血圧の原因となる塩分の取りすぎ、食べ過ぎと運動不足による肥満、喫煙習慣、飲酒方がないか振り返って頂きできるところから少しずつ改善できるようアドバイスをします。高血圧が軽症でしたら減塩や減量、節酒禁煙で薬を使わなくても血圧を下げる事ができる場合があります。
塩分の摂取は控えているつもりでも、取りすぎている方がいます。具体的な食べ物に含まれる塩分量をお教え、減塩方法をアドバイスします。
高血圧の方は、一日の塩分量を6g以下にする事が推奨されています。
①味付けを工夫する:食塩以外の下記の風味や味をつける。
酸味:レモン、酢、すだち、トマト
香辛料:こしょう、とうがらし
香味野菜:しょうが、みょうが、わさび
うまみ:だし(かつをぶし、にぼし、昆布)
②汁物、スープの量を減らす
みそ汁は一日1杯、具を多くし、汁は残す。麺類の汁は残す。
③食べすぎない
薄味でも食べ過ぎるとその分摂取する塩分は多くなります。
④食品の表示を意識する
加工品のパッケージの裏に表示されている塩分をチェックする。
ナトリウムの約2.5倍が塩分量です。
運動でも血圧が下がります。運動の効果には以下の事があります。
①血液の循環が良くなります:血液の循環が良くなりそれより血管も広がり血圧が下がります。
②減量になる:減量すると内臓脂肪が減り、内臓脂肪から分泌される血圧をあげる物質が減ります。
③ストレス解消:適度な運動はストレスを解消しリラックスし血圧が低下します。
*高血圧の薬は、一度飲み始めると一生飲まなければなりませんか?とよく聞かれますが、生活習慣を改善すれば、薬を減らしたり、場合によってはやめることもできます。ただ、高血圧は、遺伝的側面、加齢による動脈硬化、生活習慣(味の濃いものが好き、タバコが好き、お酒が好き、たくさん食べたいなど)に根ざしたものなので実際はなかなか改善できない事も多いため、高血圧を放置して合併症がでないようお薬の力を借りつつ、生活習慣を改善してお薬の減量や、中止を目指しましょう。
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにそって血圧がどの程度高いのかと高血圧以外の心血管病のどのくらいあるかによって3つに分かれます。
軽症高血圧 140~159/90~99㎜Hg | 中等症高血圧 160~179/100~109㎜Hg | 重症高血圧 180以上/110以上㎜Hg | |
危険因子なし | 低リスク | 中等リスク | 高リスク |
糖尿病以外の危険因子なし | 中等リスク | 中等リスク | 高リスク |
糖尿病、臓器障害 心血管病のいずれかがある | 高リスク | 高リスク | 高リスク |
*危険因子:喫煙、高コレステロール血症、糖尿病および予備軍
高齢(男性60歳以上、女性65歳以上)、若年発症の心血管病の家族歴
○当院では、高血圧について適宜適切なアドバイスを行います。
食生活(塩分のとりかた)、睡眠など
○患者さんの高血圧の原因にせまります。
(食生活、家族歴、血圧をあげるホルモン濃度、高血圧と密接な関係にある腎臓の状態の把握)
患者さんの現在の状態(血圧の合併症の有無)の評価を行います。